- MS法人の株式を、次世代へ承継する方法
- 暦年贈与の仕組みと、注意点
- 相続時精算課税の仕組みと、注意点
- 2つの制度の使い分け方
- 不動産を絡める場合の、特有の注意点
MS法人をお持ちの先生、特にお子様に資産や経営を引き継ぎたいとお考えの先生にとって、重要なテーマです。医療法人の理事長は原則として医師でなければなれませんが、MS法人はそうではありません。お子様が医師でなくても、MS法人の株式や経営を引き継ぐことができます。
MS法人の株式は、次世代に承継できる
MS法人が株式会社の場合、その株式は贈与や譲渡によって次世代へ移すことができます。ただし、譲渡制限が設けられている場合には、定款に従った承認手続等が必要です。
医業そのものは、後継者が医師でなければ第三者への承継を検討することになりますが、MS法人が担ってきた不動産や経営管理の部分は、医師でないお子様に残す、という選択肢もあります。
まず必要なのは、株価評価
贈与の方法を検討する前に、まず必要なのは、現在のMS法人の株価を把握することです。株価は、法人の利益や純資産の状況によって変動します。評価額を知らなければ、贈与の規模も、税負担の見込みも立てられません。
移し方は2つ——暦年贈与と相続時精算課税
毎年贈与する場合に注意したいのは、最初から「今後10年間、毎年○万円を贈与する」といった契約をしてしまうことです。この場合、毎年独立した贈与ではなく、定期金に関する権利の贈与として課税される可能性があります。毎年その都度、贈与の意思を確認し、贈与契約を成立させることが重要です。
暦年課税による贈与については、相続開始前の一定期間内の贈与財産が相続税の課税価格に加算される制度があります。令和6年以後の贈与から、対象期間が段階的に7年へ延長されているため、相続直前に始めればよいとは限りません。
2024年以降は年間110万円の基礎控除が設けられており、この基礎控除の範囲内の贈与は、原則として将来の相続税の課税価格にも加算されません。110万円を超える部分については、累計2,500万円までの特別控除があり、これを超える部分には20%の贈与税が課されます。一方、将来の相続税では、原則として110万円控除後の贈与額を贈与時の価額で相続財産に加算して精算します。なお、相続時精算課税には、贈与者・受贈者の年齢や続柄など一定の適用要件があります。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 年間の基礎控除 | 110万円 | 110万円 |
| 基礎控除を超えた場合 | 超過額に贈与税 | 累計2,500万円の特別控除。超過部分は20%課税 |
| 相続時の取扱い | 一定期間内の贈与を加算 | 110万円控除後の贈与額を贈与時価額で加算 |
| 値上がりした場合 | 贈与後の値上がりは原則として贈与税に影響しない | 贈与時点の評価額で固定(有利) |
| 値下がりした場合 | 贈与後に値下がりしても贈与税は再計算されない | 贈与時の高い評価額のまま(不利) |
| 制度の変更 | 相続時精算課税へ変更可 | 一度選ぶと暦年課税へ戻れない |
| 主な適用要件 | 特になし | 贈与者60歳以上・受贈者18歳以上の推定相続人等 |
どちらを選ぶかは、株価の将来予測だけでは決まらない
使い分けを考えるうえでは、「現在の株価」と「今後の株価の見通し」が重要な要素になります。特に、現在の株価が低く、今後大きく上昇することが見込まれる場合には、早い段階で贈与することにメリットが生じる場合があります。ただし、暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かは、株価の見通しだけでは決まりません。
他の相続財産も含めて設計する
暦年課税、相続時精算課税のいずれにも年間110万円の基礎控除がありますが、MS法人株式だけに専用の枠があるわけではありません。他の財産の贈与も含めて、どの財産を生前に移すかを全体で考える必要があります。
相続時精算課税を利用して生前に土地を贈与すると、その土地については相続時に小規模宅地等の特例を適用できません。また、暦年贈与についても、生前に土地そのものを贈与してしまえば、その土地は相続・遺贈により取得する財産ではないため、小規模宅地等の特例の対象にはなりません。ご自宅などの不動産を贈与に含める際は、この点を必ず事前にご確認ください。
まとめ
「暦年贈与か、相続時精算課税か」を先に決めるのではなく、まず現在のMS法人株式の評価額を把握し、今後の利益・純資産の推移を予測する。そのうえで、他の相続財産や家族構成まで含めて比較することが重要です。
- MS法人が株式会社の場合、株式は贈与や譲渡によって次世代へ移せる(譲渡制限がある場合は承認手続が必要)
- お子様が医師でなくても、MS法人の経営を引き継ぐことができる
- 暦年贈与は「毎年の贈与契約」の成立が重要。生前贈与加算の対象期間が段階的に7年へ延長されている点にも注意
- 相続時精算課税は110万円の基礎控除の範囲内なら相続財産に加算されない。年齢等の適用要件もある
- 贈与枠の使い道は、MS法人株式だけでなく他の財産も含めて検討する
- 不動産を含める場合は、小規模宅地等の特例が使えなくなる点に注意
- まずは、株価を知ることから始める