📋 この記事でわかること
  • MS法人の株式を、次世代へ承継する方法
  • 暦年贈与の仕組みと、注意点
  • 相続時精算課税の仕組みと、注意点
  • 2つの制度の使い分け方
  • 不動産を絡める場合の、特有の注意点

MS法人をお持ちの先生、特にお子様に資産や経営を引き継ぎたいとお考えの先生にとって、重要なテーマです。医療法人の理事長は原則として医師でなければなれませんが、MS法人はそうではありません。お子様が医師でなくても、MS法人の株式や経営を引き継ぐことができます。

MS法人の株式は、次世代に承継できる

MS法人が株式会社の場合、その株式は贈与や譲渡によって次世代へ移すことができます。ただし、譲渡制限が設けられている場合には、定款に従った承認手続等が必要です。

💡 医業とは別に、経営を残すという選択肢

医業そのものは、後継者が医師でなければ第三者への承継を検討することになりますが、MS法人が担ってきた不動産や経営管理の部分は、医師でないお子様に残す、という選択肢もあります。

まず必要なのは、株価評価

贈与の方法を検討する前に、まず必要なのは、現在のMS法人の株価を把握することです。株価は、法人の利益や純資産の状況によって変動します。評価額を知らなければ、贈与の規模も、税負担の見込みも立てられません。

移し方は2つ——暦年贈与と相続時精算課税

暦年贈与
暦年課税では、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額について、110万円の基礎控除があります。この非課税の枠を使って、毎年少しずつ贈与していく方法です。株価が比較的低く、大きな値上がりが見込まれないのであれば、時間をかけて、コツコツと移していくのに向いています。
⚠️ 毎年贈与する場合の注意点

毎年贈与する場合に注意したいのは、最初から「今後10年間、毎年○万円を贈与する」といった契約をしてしまうことです。この場合、毎年独立した贈与ではなく、定期金に関する権利の贈与として課税される可能性があります。毎年その都度、贈与の意思を確認し、贈与契約を成立させることが重要です。

📝 生前贈与加算の期間にも注意

暦年課税による贈与については、相続開始前の一定期間内の贈与財産が相続税の課税価格に加算される制度があります。令和6年以後の贈与から、対象期間が段階的に7年へ延長されているため、相続直前に始めればよいとは限りません。

相続時精算課税
今後株価が上がることが見込まれる場合には、選択肢の一つになります。この制度を使って早めに贈与しておくと、贈与した時点の評価額を基準に、将来の相続財産として計算されることになります。原則として贈与時の価額を基に相続税を計算するため、贈与後の値上がり部分は相続税の課税価格に反映されません。逆に、贈与後に評価額が下がった場合は、贈与時の高い評価額のまま相続財産に計算されてしまい、不利になることもあります。一度この制度を選択すると、その贈与者からの贈与について、通常の暦年課税には戻せません。
💡 相続時精算課税にも110万円の基礎控除があります

2024年以降は年間110万円の基礎控除が設けられており、この基礎控除の範囲内の贈与は、原則として将来の相続税の課税価格にも加算されません。110万円を超える部分については、累計2,500万円までの特別控除があり、これを超える部分には20%の贈与税が課されます。一方、将来の相続税では、原則として110万円控除後の贈与額を贈与時の価額で相続財産に加算して精算します。なお、相続時精算課税には、贈与者・受贈者の年齢や続柄など一定の適用要件があります。

項目暦年課税相続時精算課税
年間の基礎控除110万円110万円
基礎控除を超えた場合超過額に贈与税累計2,500万円の特別控除。超過部分は20%課税
相続時の取扱い一定期間内の贈与を加算110万円控除後の贈与額を贈与時価額で加算
値上がりした場合贈与後の値上がりは原則として贈与税に影響しない贈与時点の評価額で固定(有利)
値下がりした場合贈与後に値下がりしても贈与税は再計算されない贈与時の高い評価額のまま(不利)
制度の変更相続時精算課税へ変更可一度選ぶと暦年課税へ戻れない
主な適用要件特になし贈与者60歳以上・受贈者18歳以上の推定相続人等

どちらを選ぶかは、株価の将来予測だけでは決まらない

使い分けを考えるうえでは、「現在の株価」「今後の株価の見通し」が重要な要素になります。特に、現在の株価が低く、今後大きく上昇することが見込まれる場合には、早い段階で贈与することにメリットが生じる場合があります。ただし、暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かは、株価の見通しだけでは決まりません。

他の相続財産も含めて設計する

暦年課税、相続時精算課税のいずれにも年間110万円の基礎控除がありますが、MS法人株式だけに専用の枠があるわけではありません。他の財産の贈与も含めて、どの財産を生前に移すかを全体で考える必要があります。

⚠️ 不動産を含める場合は、小規模宅地等の特例に注意

相続時精算課税を利用して生前に土地を贈与すると、その土地については相続時に小規模宅地等の特例を適用できません。また、暦年贈与についても、生前に土地そのものを贈与してしまえば、その土地は相続・遺贈により取得する財産ではないため、小規模宅地等の特例の対象にはなりません。ご自宅などの不動産を贈与に含める際は、この点を必ず事前にご確認ください。

① MS法人株式の評価額を把握する ② 今後の利益・純資産の推移を予測する ③ 暦年課税・相続時精算課税を比較する ④ 他の相続財産・家族構成と合わせて検討 どの方法で、いつから移すかを決める

まとめ

「暦年贈与か、相続時精算課税か」を先に決めるのではなく、まず現在のMS法人株式の評価額を把握し、今後の利益・純資産の推移を予測する。そのうえで、他の相続財産や家族構成まで含めて比較することが重要です。

※ 本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。制度は改正が続いている分野ですので、実行の前には必ず最新の情報をご確認ください。