📋 この記事でわかること
  • KSK2とは何か、何が変わるのか
  • 医療法人・MS法人にとって、何が変わり得るのか
  • 税務調査に備えて確認しておきたい、6つの論点
  • 今のうちに整理しておきたいこと

令和8年9月、国税庁の基幹システムが、現行のKSK(国税総合管理)システムから、次世代システム「KSK2」へと本格移行します。ここで大切なのは、「KSK2が導入されるから、税務調査が厳しくなる」という単純な話ではない、という点です。KSK2そのものが調査の方針を変えるわけではなく、調査を支える情報基盤が高度化する、という位置づけで捉えるのが正確です。

KSK2で変わること

現行のKSKシステムは、平成7年に導入が始まり、すでに四半世紀が経過しています。国税庁は、KSK2の開発コンセプトとして、次の3点を示しています。

このうち、実務上とくに関係が深いのが2点目です。現在、税目別となっているデータベースやアプリケーションが統合されることで、税目をまたいだ情報の活用が、より効率的になると考えられます。

現行 KSK 法人税 所得税 消費税 相続税 税目別・事務系統別の DB・アプリケーション 統合 次世代 KSK2 法人税・所得税 消費税・相続税 DB・アプリケーション を統合
💡 KSK2は「AIの調査システム」ではありません

KSK2は、あくまでデータ基盤の刷新です。なお、国税庁では、KSK2の整備と並行して、データ分析やAIの活用など、課税・徴収事務の効率化・高度化も進めています。ただし、これらはKSK2そのものの機能というより、税務行政全体のデジタル化の一環として理解しておくとよいでしょう。

医療法人とMS法人にとって、何が変わり得るか

医療法人・MS法人では、法人と個人、親族間の取引は、これまでも総合調査で確認される重要な論点でした。KSK2の導入により、調査に必要な情報を横断的に把握・活用しやすくなると考えられます。

税務調査に備えて確認しておきたい6項目

以下は、医療法人・MS法人において税務上問題となりやすく、税務調査に備えて確認しておきたい代表的な論点です。個別の事情によって確認事項は異なりますが、まずはこれらの項目を点検しておくとよいでしょう。

① 医療法人からMS法人への家賃
近隣の相場と比べて、著しく高い水準になっていないか。設定の根拠となる資料(不動産会社の査定書、周辺相場の資料など)は残っているか。
② 業務委託料の実態
契約書はあるか。実際にどのような業務を、誰が、どれだけ行っているのか、説明できる状態になっているか。金額だけでなく、業務の実態を示せることが重要です。
③ 役員報酬の妥当性
理事長がMS法人の役員も兼ねている場合、それぞれの法人でどのような職務を担っているのか。その職務内容や勤務実態等に照らして、それぞれの役員報酬額を説明できるか。
④ MS法人株式の贈与における時価評価
贈与の時点で、株価を適正に評価しているか。評価の根拠資料は残っているか。非上場株式の評価額は、会社の利益や純資産等によって変動するため、贈与を検討する際には事前に評価額を確認しておくことが重要です。
⑤ 親族への給与
実際の勤務実態(勤務時間、業務内容)に見合った金額になっているか。他の従業員との比較で、著しく高い水準になっていないか。
⑥ 役員貸付金・借入金
法人と理事長個人の間の資金のやり取りが、貸付金・借入金として適切に整理されているか。契約書や返済実績はあるか。
📝 どの項目にも共通する視点

どの項目にも共通するのは、「なぜ、その取引を行ったのか」を示す記録が残っているかという点です。金額の妥当性だけでなく、社員総会・理事会等の議事録、契約書、価格設定の根拠資料といった、意思決定の記録があるかどうかが、説明の説得力を大きく左右します。

まとめ:「根拠を残す」という、変わらない基本

KSK2で税務上のルールそのものが変わるわけではありません。むしろ、これまでも重要だった「取引の実態や合理性を、資料に基づいて説明できる状態にしておく」という基本が、引き続き重要になります。

※ 本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。制度の詳細や導入時期は変更される場合がありますので、最新の情報は国税庁の公表資料をご確認ください。
【参考】