- 基本金とは何か——株式会社の「資本金」との違い
- 第1号〜第4号基本金、それぞれの内容
- 基本金は取り崩せるのか
- 借入金で固定資産を取得した場合の、基本金組入れの考え方
学校法人の決算書に「基本金○億円」と書いてあったら、これは「学校法人に○億円の現金がある」という意味なのでしょうか。答えは、違います。基本金は、学校法人会計に特有の、少し独特な概念です。今日は、この基本金を、第1号から第4号まで、順番に整理します。
基本金とは何か
学校法人会計基準第12条は、基本金を次のように定義しています。
学校法人が、その諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その事業活動収入のうちから組み入れた金額を基本金とする。
株式会社の「資本金」は、出資者から払い込まれた金額を表すものですが、学校法人の「基本金」はこれとはまったく別の概念です。基本金は、学校法人が教育研究活動を続けていくために必要な資産を、継続的に保持するための会計上の仕組みです。貸借対照表の純資産の部に計上されますが、それに対応する現金が、そのまま金庫に積み立てられているわけではありません。
基本金は、第1号から第4号までの4種類に分かれています。それぞれ、性質がまったく異なります。
第1号基本金:すでに取得した固定資産
学校法人が設立当初に取得した固定資産で教育の用に供されるもの(校地・校舎・教育研究用機器備品など)や、新たな学校の設置、既設の学校の規模拡大・教育充実向上のために取得した固定資産の価額に相当する金額です。第1号基本金は、学校法人が保有する基本金の中でも、最もイメージしやすいものだと思います。
第1号基本金は、学校法人が教育研究活動を継続するために必要な固定資産について、その取得価額に相当する額を基本金として組み入れるものです。ただし、「固定資産を取得した=同額の現金が別に残っている」という意味ではありません。校地や校舎、教育研究用機器備品など、教育活動に必要な資産を継続的に保持するための金額が基本金として計上されていると考えるとわかりやすいでしょう。
第2号基本金:将来取得する固定資産への備え
新たな学校の設置や、既設の学校の規模拡大・教育充実向上のために、将来取得する固定資産の取得に充てる金銭その他の資産の額です。第1号基本金との違いは、「すでに取得したもの」か「これから取得する予定のもの」かという点にあります。
第2号基本金への組入れは、固定資産の取得に係る基本金組入計画に従って行います。理事会等で決定した計画に基づき、計画的に組み入れていく性質のものです。
第3号基本金:基金として継続的に保持・運用する資産
基金として継続的に保持し、かつ運用する金銭その他の資産の額です。奨学基金や研究基金など、元本を維持しながら、その運用益を活動に充てることを目的とした資産が該当します。第3号基本金も、第2号と同様に、組入計画に基づいて組み入れます。
第4号基本金:恒常的に保持すべき運転資金
恒常的に保持すべき資金として、文部科学大臣が別に定める額です。第1号〜第3号が「特定の資産の取得・保持」に対応しているのに対し、第4号基本金は、学校法人の日常的な運営を支える運転資金という性格を持っています。
具体的な算定式は、文部科学大臣裁定で定められています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 算定の基礎 | 前年度の人件費(退職給与引当金繰入額・退職金を除く)+教育研究経費(減価償却額を除く)+管理経費(減価償却額を除く)+借入金等利息 |
| 算定式 | 上記の合計額 ÷ 12 |
つまり、第4号基本金は、「年間の経常的な支出の、おおむね1か月分」に相当する額です。学校法人が教育活動を安定的に継続するためには、日常的な支払いに充てる一定の運転資金を常時確保しておく必要があります。そのための金額を基本金として維持する仕組みと理解するとわかりやすいでしょう。
会計年度末において、第4号基本金に相当する資金を実際に保有していない場合には、計算書類にその旨と、資金を確保するための対策を注記することが求められています。第4号基本金相当の資金を実際に確保できているかは、学校法人の資金面を確認するうえで重要なポイントになります。
基本金は取り崩せる
基本金は、一度組み入れたら永久にそのまま、というものではありません。学校法人会計基準第14条は、次のいずれかに該当する場合に、その範囲内で基本金を取り崩すことができると定めています。
- その諸活動の一部または全部を廃止した場合(廃止した活動に係る組入額)
- 経営の合理化により、第1号基本金に対応する固定資産を有する必要がなくなった場合(その固定資産の価額)
- 第2号基本金に対応する資産を、将来取得する固定資産の取得に充てる必要がなくなった場合(その資産の額)
- その他やむを得ない事由がある場合(その事由に係る組入額)
ただし、基本金はそもそも「教育研究活動に必要な資産を継続的に保持するため」の仕組みですから、自由に、安易に取り崩せるものではありません。学校・学部等の廃止や規模の縮小、将来計画の変更・中止など、実態を伴った事由があって初めて、取崩しが認められます。
借入金で固定資産を取得した場合はどうなる?
第1号基本金に該当する固定資産を、自己資金ではなく、借入金や未払金で取得した場合は、少し扱いが異なります。取得した時点で、取得価額の全額を直ちに基本金へ組み入れるとは限りません。
学校法人会計基準第13条第3項では、借入金・未払金により固定資産を取得した場合、その借入金・未払金の返済・支払を行った会計年度において、返済・支払を行った金額に相当する金額を、基本金に組み入れることとされています。つまり、自己資金で取得した場合とは、組入れの時期が異なることがある、という点をおさえておいてください。
まとめ
基本金は、「貯金」でも「資本金」でもありません。学校法人が教育研究活動を続けていくために、どのような資産を継続的に保持する必要があるのか——それを表す、学校法人会計に特有の概念です。
- 第1号基本金:すでに取得した、継続的に保持すべき固定資産の価額
- 第2号基本金:将来取得する固定資産に充てる資産(組入計画に基づく)
- 第3号基本金:基金として継続的に保持・運用する資産(組入計画に基づく)
- 第4号基本金:恒常的に保持すべき運転資金(前年度の経常的支出のおおむね1か月分)
- 基本金は、活動の廃止や計画の変更など、実態のある事由があれば取り崩せる
- 借入金で固定資産を取得した場合、組入れの時期は自己資金取得の場合と異なることがある
- 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)第12条〜第14条
- 「学校法人会計基準第13条第1項第4号に規定する恒常的に保持すべき資金の額について」(昭和62年8月31日文部大臣裁定、令和7年2月12日最終改正)
- 文部科学省「学校法人会計基準等」