📋 この記事でわかること
  • 改正の背景——なぜ根拠法・目的が変わったのか
  • 資金収支内訳表から「セグメント情報」へ、何が変わったのか
  • セグメント区分の考え方(大学・病院など)
  • 共通経費・人件費の配分基準の見直し
  • 令和9年度からの一斉適用に向けて、今から準備したいこと

令和7年4月、改正学校法人会計基準が施行されました。単なる様式の変更ではなく、会計基準としての位置づけそのものが変わる、大きな改正です。すでに施行されていますが、実務対応がすべて令和7年度に完了するわけではありません。令和9年度に向けて、今から準備しておきたいポイントを整理します。

改正の背景——なぜ根拠法・目的が変わったのか

私立学校法の一部を改正する法律(令和5年法律第21号)により、これまで私立学校振興助成法に位置づけられていた学校法人会計基準は、私立学校法に位置づけ直されました。これに伴い、「学校法人会計基準の一部を改正する省令(令和6年文部科学省令第28号)」等が令和6年9月30日に公布され、令和7年4月1日から施行されています。

項目改正前改正後
根拠法私立学校振興助成法私立学校法
主な目的補助金の適正配分ステークホルダーへの情報開示

文部科学省は、私立学校法の改正により学校法人会計基準の根拠が私立学校振興助成法から私立学校法に移ることを受け、開示に適した会計基準とすべく検討を行ったとしています。ガバナンス強化の観点から、ステークホルダーへの情報開示をより重視する会計基準へと位置づけが変わったことが、今回の改正の大きなポイントです。

資金収支内訳表から「セグメント情報」へ

これまでの資金収支内訳表・事業活動収支内訳表・人件費支出内訳表は、国や地方公共団体が経常費補助金の効果を把握するための資料という性質が強く、必ずしも部門別の教育研究コストの実態を表すものではありませんでした。人件費についても、按分ではなく、発令の内容や主たる勤務部門により計上することが求められていたためです。

改正後、私立学校法上の計算書類では、従来の内訳表に代わり、「セグメント情報」を注記事項として表示することになりました。セグメント情報は、開示を前提とした計算書類の注記として、開示目的の財務報告の一部をなすものです。

⚠️ 助成法上の内訳表は、引き続き必要です

私立学校振興助成法による補助金を受ける学校法人については、所轄庁への提出書類として、資金収支内訳表・事業活動収支内訳表・人件費支出内訳表の作成が引き続き必要です。「内訳表がすべて廃止された」わけではなく、私立学校法上の計算書類における位置づけが、セグメント情報に置き換わった、という点にご注意ください。

💡 資金収支内訳表とセグメント情報の違い

従来の内訳表は、補助金の適正配分に必要な部門別情報を把握するための資料という性格が強い一方、セグメント情報では、開示目的の観点から経済の実態をより適切に表すことが求められます。同じ「部門別の数字」でも、作られる目的が異なる点に注意が必要です。

セグメント区分の考え方

セグメント情報では、設置する学校や施設に応じて、次の区分を共通の基本区分として設定します。

大学・短期大学・高等専門学校は、複数設置している場合はそれぞれ学校ごとにセグメントを設定します。一方、「その他」に含まれるものが「学校法人部門」のみの場合は、セグメントの名称を「学校法人部門」とすることができます。

※ なお、「その他」以外に該当するセグメントが1つしかない場合(大学を1校のみ設置している場合など)は、一定の要件のもとでセグメント情報の作成そのものを省略できるケースもあります。

病院の取扱い
セグメント「病院」には、診療所を含みます。ただし、主に学生の健康管理や教職員の福利厚生等のために設置している診療所については、セグメント「病院」として区分することを求められません。
附属病院の特別な扱い
医学部・歯学部の教職員が、教育研究活動と一体的に診療業務を行う附属病院の業務を兼務する場合は、医学部・歯学部と当該附属病院を一括した「うち、医学部等及び附属病院」というセグメントを設け、セグメント「大学」の内数として表示することとされています。

共通経費・人件費の配分基準——ここが実務のポイント

特定のセグメントのものとして把握できる収入・支出は、当該セグメントへ直接計上します。問題は、複数のセグメントに共通する収入・支出をどう配分するかです。

通知では、経済の実態を適切に表す配分基準(新配分基準)により配分することとされています。在籍者数、職員数、使用時間、面積等も参考にしながら、各法人の実態に応じて合理的な配分基準を設定することが求められます。配分基準の選択にあたっては、計算がいたずらに複雑にならないよう留意することも求められています。

⚠️ 人件費は「発令基準」だけでなく、勤務実態をより重視

複数のセグメントを兼務する教職員については、勤務時間や兼務割合など、勤務実態を反映した配分基準によることが基本です。一方、発令の内容によって人件費が明確に区分され、その計上が実態に合っている場合には、その区分による計上も可能です。

令和9年度からの一斉適用——今から準備したいこと

ここが、2026年の今、この記事を読む意味がある部分です。新配分基準は、令和9年度からの一斉適用とされています。令和9年度からの一斉適用前であっても、各学校法人が早期適用することは妨げられません。

また、セグメント区分についても、令和7年4月1日から令和9年3月31日までの間は、より集約したセグメント区分とすることも可能とされています。つまり、令和7・8年度には経過的な取扱いが設けられています。

時期取扱い
令和7年4月〜令和9年3月より集約したセグメント区分も可能。新配分基準の早期適用も可能
令和9年度〜新配分基準・セグメント区分(「学校法人部門」の業務範囲を含む)を一斉適用

新配分基準は、一律に定めるのではなく、各学校法人がその実態・実情に応じて適切な配分基準を定めてセグメント情報を作成し、説明責任を果たすべきという考え方に基づいています。令和9年度を待たず、今のうちに、自法人の部門構成や共通経費の内訳を洗い出し、どのような配分基準が実態に合うのかを検討しておくことをお勧めします。

まとめ

※ 本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。制度の詳細や今後の通知・Q&Aの内容によって、実務上の取扱いが変わる可能性がありますので、個別のご状況については必ずご相談ください。
【参考】